私が家庭教師をやったのは、大学時代。昭和40年代の前半です。
自分自身の信念では、勉強とは自分との闘いで、人の力を借りるものではないという考え方でしたが、父の親友の一人息子さんということで、引き受けました。
子供は中学生。一人っ子の男の子です。
一応先方のお父さんとも顔見知りでしたが、基本方針を伝えて、週に二回、一回に2時間を目安にやることになりました。
教える科目は、主要教科の国語と数学が中心ですが、その子との初対面は顔合わせということで、まあ世間話と言うか、学校や勉強のこと、趣味や、これからの希望のこと、そして、勉強とは何かなどと、若造のくせに偉そうなことを言ったかもしれません。
しかし、その子には先方の親御さんがご希望の進学校に行く以外の夢がありました。
それは、野球をやりたいというもの。
家庭教師は約半年くらい続きましたが、最後にこの子に向いているのは、やはり自分が本当にやりたいことだと思い、意を決して、先方の親御さんを話しました。
私曰く。
「この世には学歴より大事なものがあるのじゃないでしょうか」。
先方の親御さんは、ご両親とも、私の親に気を使われたか、お怒りになりませんでしたが、それで、家庭教師の仕事は終わり。
そして、後日談。
その子は、自分の希望する学校に行ったと父から聞きました。
こんな話を書きますと、今のプロの家庭教師の方からは、青臭いプロ根性がない人間だと思われるでしょうが、人には信条があります。
そんな家庭教師の経験談と言うか、思い出話のお粗末です。